デザインの耳より情報集めました

というのは、Sは単なる流通企業の枠を超える存在になっているからだ。 ひとつ例を挙げよう。
2005年10月に「S」の店頭に並んだオリジナル商品の「極上のひとくち」シリーズ。 Sの商品部がおいしいチョコレートの原料を捜し求めてたどり着いたのは、世界最大の原料メーカー、スイスのバリー・K社製だった。
本来なら日本のお菓子メーカーがK社に出向いて原料の供給を要請するはずだが、商慣習に阻まれて、代理店を通さずにK社から供給を受けることができなかった。 代理店が中に入るとそれだけ仕入れコストがかかるため、Sが直接、K社から原料を仕入れ、それを日本の有力菓子メーカーに供給する体制にした。

小売業のSが、原材料メーカーと菓子メーカーの橋渡し役まで買ってでるのだ。 Sにはこうした革新性、イノベーションが随所にある。
ここは、1972年の創業前夜から2006年春までの約35年間のSの取り組みについて詳細に記述した。 登場人物は敬称略とし、肩書きは断りがない限り当時のものとした。
また、Sと「S」の表記が出てくるが、基本的に前者が企業、後者が店舗と区別している。 創業以来、日本経済の浮き沈みとはまったく関係なく33期連続して増収増益を達成したS。
日本の流通システムだけでなく、流通先進国と言われる米国でも、日本で進化したS流の経営手法が浸透しつつある。 世界最大の小売業、米ウォルマートーストア・ズがSの商品開発、情報システム、物流システムなどの経営ノウハウを徹底的に研究し、今でも時折、ウォルマート首脳がわざわざ来日し、S会長に教えを請いにやってくるほどだ。
その奥義を豊富な事例でもって解き明かしていきたいと思う。 2005年12月26日、街中に年末年始特有の雰囲気が色濃く出始めたその矢先、日本の流通史上最大級のニュースが飛び込んできた。
「SとMの経営統合」S、Y堂などを傘下にもつSと、S百貨店とそごうの百貨店を束ねるM。 経営統合によりグループ売上高は7兆円を超え、米W、仏K、独Mなどに次ぐ世界流通企業の5位に浮上する。
SとMの記者会見でのSとW店という流通分野の主力業態を抱える、世界にも希な巨大流通グループが誕生するニュースに産業界だけでなく消費者も大きな関心を寄せた。 東京都内のホテルで開かれた記者会見場には200人を超える報道陣が詰め掛け、S会長のSとM社長のWが考える経営統合の狙いを聞きだそうと、質問が相次いだ。
Wはこう語った。

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